腰痛症
■1)腰痛症とは
腰痛症は、「腰部に痛みを感じる状態」を指し、原因が明確なもの(特異的腰痛:椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症など)から、明確でないもの(非特異的腰痛:筋筋膜性、姿勢性)まで多岐にわたり、そのほとんどが非特異的腰痛と言われています。発症は急性・慢性に分かれ、ぎっくり腰など日常生活動作に支障を来たすケースもあります。筋筋膜性では、局所の筋肉が痙攣したり、ピクピクするなどの「局所単収縮反応(Local Twitch Response:LTR)」が認められます。
■2)原因と背景
加齢、長時間の座位、不良姿勢、筋力低下、過労、ストレス、体幹支持筋のアンバランスなどが要因とされます。慢性腰痛には心理的要素が関与することも示唆されています。
■3)当院の治療内容
当院では以下のアプローチを組み合わせて対応しています:
- 局所の圧痛点・トリガーポイントへの刺鍼(ドライニードリング)
- 脊柱起立筋・腰方形筋・大腰筋への刺鍼
- LTRを誘発させる手技
- 併発症状に対するアプローチ
解説:ドライニードリング
<ドライニードリングのイメージ>
用語解説:一般的な鍼灸鍼を用い、筋・筋膜上のトリガーポイントを刺激することで、「局所単収縮反応(Local Twitch Response:LTR)」と呼ばれる独特の反応を誘発させる手技です。LTRが生じることで筋緊張が緩和され、血流の改善とともに痛みが軽減・消失しやすいと言われています。薬液を使用しないことから、欧米では「ドライニードリング(Dry Needling)」と呼ばれている技術体系です。
■4)施術方針
急性腰痛では発症直後から複数回、慢性腰痛では週1回程度を基本とし、改善がみられた段階で間隔を調整します。トリガーポイントの変化や筋緊張の改善を観察しながら、漸減的に施術を継続していきます。一般的に、トリガーポイントに鍼先がヒットすると、①(多くは複数回)LTRが生じたり、②鍼独特のひびき感(得気、鍼感)が生じます。この「LTR」、「ひびき感」は治療指標となり、症状軽減と共に軽減していきます。
単なる筋疲労などであれば、2週間程度で回復することがほとんどです。慢性化しやすい方は、定期的な通院をすることで、よい状態を保ち、増悪・再燃を予防していきます。
■5)院長からアドバイス
若年者では「非特異的腰痛(筋筋膜性、姿勢性)」が多く、高齢者では「特異的腰痛(椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎圧迫骨折など)」が混在する症例が多い印象です。また、急性腰痛症とは言っても、頻回に発症する場合は、腰椎椎間板ヘルニアなどが隠れている可能性もあり、「単なるぎっくり腰だから大丈夫。」と安易に考えるのは危険です。また、皮膚症状を伴う帯状疱疹、結石の発作、がんの骨転移なども腰痛を起こす原因となるため注意が必要です。実際に患部を露出させた後、皮膚症状を発見するなど、帯状疱疹の感染を疑うこともあります。
また、高齢者の中には、痛みが軽減した後も、コルセットを漫然と使用する方がいらっしゃいます(いわゆるコルセット依存)。急性期には、コルセットで負担を軽減することは必要ですが、不必要に固定をすることで、筋力は低下し、関節可動域も狭くなります。すると、知らず知らずのうちに「ロコモティブシンドローム(運動器症候群:運動機能の低下)」となり「サルコペニア(転倒や要介護状態になる可能性がある状態)」に一歩づつ近づいていってしまいます。痛みの軽減にあわせて、適切な生活習慣とラジオ体操などの運動(筋骨の強化)が大切となります。
昨今では、「ドイツ鍼治療試験:German Acupuncture Trials (GERAC)」において、慢性腰痛症に対する鍼治療は、従来治療(薬物投与、理学療法、リハビリ運動など)に比べて効果が高いことがわかっており、ドイツ国内の公的保険制度に組み込まれたという経緯があります。「何をしても効かないんだから、鍼なんてもっと意味ないでしょう、、、」というわけではないのです。とくに、鍼治療を試したことがない方には、鍼治療も選択肢の一つとしておすすめしています。
単なる「腰痛症」とは考えず、慢性化させないように適切なケアをすることが大切です。
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