コラム記事
最終更新日:2025年10月21日
パーキンソン病に対する早期介入の重要性
片側の手足の震えから徐々に進行していく「パーキンソン病」という病気をご存じですか?パーキンソン病では、ドパミン製剤が初期(いわゆるハネムーン期)に著効することが知られており、現在もドパミン製剤を中心とした薬物療法と運動療法が治療の柱となっています。
しかし、このハネムーン期は永遠には続きません。多くの場合、3〜5年程度で効果が安定しなくなります。ハネムーン期といっても、健康な頃のように自由に動けるわけではありません。その理由のひとつは、ドパミンを貯蔵するドパミン神経細胞が徐々に減少していくためです。
ドパミン神経細胞が減ると、体内に貯められるドパミン量そのものが減少し、薬の効果が途中で切れて急に動けなくなる「ウェアリング・オフ」と呼ばれる現象が出現します。また、残された神経細胞に過剰なドパミンを補充すると、別の細胞にまで作用してしまい、体が勝手に動いてしまう「ジスキネジア」や「ジストニア」といった不随意運動が起こります。こうした副作用が目立ち始める時期を、ハネムーン期の後に訪れる進行期と呼びます。
パーキンソン病患者の平均寿命は、一般の方とほとんど変わりませんが、健康寿命(自立して生活できる期間)は短くなりやすく、長い療養生活を余儀なくされるケースも少なくありません。また、ハネムーン期が占める割合は全体からみてもわずかです。運動機能の低下がすでに始まっているため、初期からの積極的なケアが非常に重要です。よく「もっと悪くなってから頑張ればいい」と考える方もいますが、一度失われた身体機能を後から取り戻すことは容易ではありません。
また、パーキンソン病では「震え」だけでなく、認知機能の変化や便秘・頻尿などの自律神経症状もみられます。進行に伴い、認知の変化から感情が不安定になったり、夜間の頻尿で何度も起きてしまうこともあります。薬の効きが切れると転倒しやすくなるため、目を離せない時間帯も増えていきます。こうした状況は、ご本人だけでなく介護を担うご家族にも大きな負担となるため、早い段階からの症状緩和・進行抑制がとても重要です。
パーキンソン病では、進行期以降に症状が重くなってから鍼治療の併用を検討されるケースが多い印象です。しかし、その段階では病状がある程度固定してしまっているため、改善の幅が限られてしまうことも少なくありません。だからこそ、鍼灸に限らず、早期の段階から身体を整え、薬の効きを支えるケアを行うことが重要だと感じています。
鍼治療を行うことで自律神経が整い、消化機能が改善することで薬の吸収が安定し、結果として薬効の持続性を高める助けとなるケースもあります。また、パーキンソン病の方は痩せ傾向になることが多いため、消化機能の改善は栄養吸収やエネルギー維持の面からも重要となります。
パーキンソン病は、「末期に至るまでに10~20年(末期は1~3年)」と言われているため、いわゆる「長い付き合いになる病気」です。薬物療法と運動療法を中心に行いながら、可能な範囲で鍼治療などのケアを併用していくことが、長期的な安定につながると考えています。とくに、薬の効きにムラが出始めたり、筋肉のこわばりや便秘などの自律神経症状が強くみられる場合は、鍼治療の併用によって体調の波をやわらげやすくなります。そのため、こうした症状がみられる前から少しずつ取り入れておくことをおすすめしています。
パーキンソン病は進行の速さや症状の出方に個人差はありますが、進行性疾患のため、最終的な経過の方向性はほとんどの方で共通しています。だからこそ、悪化してから慌てて対応するのではなく、「次に起こる変化を予期して行動すること」が非常に重要です。