広瀬台はり院|コラム|脳卒中の再発と重症化

広瀬台はり院

コラム記事

最終更新日:2025年10月25日

脳卒中の再発と重症化

脳卒中(脳出血、脳梗塞)の再発率は非常に高く、①発症後1年で約10%、②発症後5年で約30%、③発症後10年で約50%と報告されています。特に再発時は、初回よりも症状が重くなる傾向があり、注意が必要です。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙・飲酒、不規則な生活や服薬の中断などが主な要因とされており、生活習慣病がその土壌にあるといわれています。発症後も、生涯にわたって管理と再発予防を続けることが重要です。

一般的に、脳神経は一度損傷すると完全に再生することはありません。そのため、残存している神経ネットワークが代償的に働き、脳機能を再学習・再構築していきます。この過程を「神経可塑性(しんけいかそせい)」と呼びます。神経可塑性が十分に発揮されることで、機能回復が生じ、後遺症が軽減または消失していくとされています。ただし再発時には、「代償的に働いていた脳神経領域の損傷」や「回復に関わる脳全体の余力(予備能)が相対的に少なくなる」ため、より重症化しやすくなると考えられています。

また、よくある誤解として、「脳卒中は同じ場所に再発する」と考えられがちですが、実際にはそうとは限りません。再発時は、初発時とは別の脳血管領域で起こることもあり、結果として、左右両側の脳に損傷が及ぶこともあります。これを「両側性障害(両側性脳卒中/多発性脳卒中)」と呼びます。

片側の脳が障害された場合には、反対側の神経がある程度代わりに働いてくれます。しかし、両側に病変が及ぶと、その代償が効かなくなります。その結果、手足の麻痺に加えて、「言葉の障害(構音障害)」や「飲み込みの障害(嚥下障害)」が強く出やすくなります。

飲み込み(嚥下)は、延髄や大脳皮質からの指令が両側性に制御されているため、一側の損傷では軽度で済んでも、両側に障害が及ぶと飲み込み動作が難しくなり、誤嚥性肺炎を起こす危険が高まります。また、咳反射や声帯閉鎖が不十分になることで、誤って入った食物や唾液を排出できず、むせが起きない「無症候性誤嚥(サイレントアスピレーション)」が生じることもあります。

第一に、再発予防が大切ですが、発症後は早い段階から回復に向けた「トータルケア」を意識することが重要です。入院中は医療リハビリが中心となりますが、可能な限り早期から「鍼治療なども含めた総合的なアプローチ」を検討すべきです。鍼治療は、「脳循環の改善」や「神経機能の回復」、「脳の炎症抑制」が期待できます。回復は時間との勝負と考えられているため、発症後から多角的に取り組むことが、その後の生活の質を大きく左右すると感じています。

昨今の保険医療制度では、180日を超えると介護保険によるサービスに切り替わります。この時期を「維持期」と呼び、「症状は固定(フラット)になるため、積極的な医療ケアは不要」と考えられがちですが、私はそうは思いません。十分なケアがなければ身体機能が低下していくことに変わりはありません。機能回復の余地があるならば、介護保険内にとどまらず、自費治療を含めたトータルケアが必要なケースも少なくありません。とくに若年層・中年層では、「社会復帰(職業復帰)」が喫緊の課題となるため、それを踏まえたプランニングが大切だと感じています。

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