広瀬台はり院|コラム|脊椎圧迫骨折は全身の機能低下を引き起こす

広瀬台はり院

コラム記事

最終更新日:2025年11月22日

脊椎圧迫骨折は全身の機能低下を引き起こす

脊椎の圧迫骨折は「背中の痛み」だけで済むものではありません。椎体が押しつぶされて高さが低くなると、その部分だけ前に折れ込み、背中全体が丸くなる「後湾(こうわん)」へと進みます。この姿勢の変化が胸郭や腹腔に影響し、「①呼吸が浅くなったり(呼吸器の問題)」、「②食後の圧迫感が続いたり(胃腸消化器の問題)」といった全身の不調が生じます。

背中が丸まることで胸郭が前後方向に狭まり、肺が十分に広がるスペースが失われます。肺下部まで空気が入りにくくなり、横隔膜の動きも制限されるため、「深く吸えない」「息が苦しい」といった症状が出やすくなります。高齢者ではもともと肺活量が低下しているため、この影響がさらに強く現れます。

後湾が進むと胸郭の下部と骨盤の距離が近づき、胃や腸が上から圧迫される状態になります。食後の苦しさ、胸焼け、早期の満腹感、食欲低下、便秘などが続き、栄養面・生活面にも影響が現れます。

圧迫骨折や背骨の変形が進み始めているサインとして、「最近背中が丸くなってきた」「身体を伸ばすと痛い」「身長が縮んだ気がする」などの変化が少しずつ現れることがあります。この段階で医療機関を受診できれば、悪化を防げる可能性があります。しかし、一度潰れた椎体が元の形に戻ることはなく、変形が残れば「呼吸・食事・歩行といった生活機能」へ長く影響し続けます。だからこそ、早期受診と画像検査(レントゲン・MRI・骨密度検査)がとても重要と言われているわけです。

圧迫骨折を理解するうえで、「①栄養状態」、「②体格」、「③筋肉量」、「④性別」、「⑤年齢」は重要な要素です。慢性的な栄養不足や、もともと痩せている体質、運動習慣が乏しい生活は、骨と筋肉を同時に弱らせてしまいます。タンパク質が不足すると筋肉の材料が足りず、筋量が落ちやすくなり、脊椎を支える力が弱まります。ビタミンDやカルシウムが不足すれば骨代謝が低下し、骨は脆くなります。筋肉量が減るサルコペニアは姿勢の安定性を損ない、転倒リスクも確実に高まります。特に女性では閉経後にエストロゲンが急激に低下するため、骨吸収が進み、骨粗鬆症と圧迫骨折のリスクが一気に高まります。BMIが低い女性では、この影響がさらに強く現れます。

また、「背骨の変形を矯正する目的で整体・カイロなどを受ける」のは非常に危険です。圧迫骨折や変形がある状態で強い力を加えられると、椎体がさらに潰れたり、神経を傷つけてしまうおそれがあります。頸椎の脱臼や脊髄損傷など、重篤な事故につながった例も報告されています。また、「骨盤矯正で治る」「姿勢矯正で骨が元に戻る」といった宣伝には医学的な根拠がなく、構造的な問題を手技で矯正することはできません。

なかには、「痩せていれば生活習慣病を防げるから安心」と考えて、必要以上に体重を落とそうとする方もいます。しかし、この「痩せ=健康」という認識には大きな落とし穴があります。痩せすぎは、栄養不足を招き、筋肉量や骨密度が低下しやすい状態になります。その結果、わずかな負荷でも骨折が起きやすくなり、骨折をきっかけに動かなくなると、筋力低下・食事量の減少・活動量の低下という悪循環に陥ります。この流れはロコモやフレイルへ移行しやすい典型的なパターンで、生活機能の衰えを一気に進めてしまう原因となります。

結論として、最も厄介なのは「骨粗鬆症そのものには痛みがない」という点です。骨は静かに弱くなり、本人は気づかないまま進行していきます。痛みが出る頃にはすでに圧迫骨折や変形が始まっていることも珍しくありません。骨粗鬆症を放置すると、呼吸の質が低下し、胃腸が圧迫され、歩行やバランス能力が落ち、全身の機能が少しずつ失われていきます。これらの変化は健康寿命だけでなく、寿命そのものにも影響を与える可能性があります。

「痛くないから大丈夫」ではなく、「早期発見・早期治療」が最も重要です。なぜなら、背骨を守ることは、未来の自分の生活と命を守ることに直結するからです。

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