コラム記事
最終更新日:2025年12月15日
痛みと画像所見は必ずしも一致しない
加齢による骨格の構造の変化などによって生じる疾患を「退行性疾患(たいこうせいしっかん)」と呼びます。「変形性膝関節症」や「変形性腰椎症(すべり症、脊柱管狭窄症)」などが該当します。ほとんどの場合、レントゲンなどの画像所見を得た上で診断されることは周知の事実と思いますが、痛みとの関係性については知らない方も多いかと思います。
痛みと画像所見は、完全に一致するような印象を持たれがちですが、実際は、必ずしも一致するとは限りません。その理由の一つは、「痛みが骨格の構造変化だけで生じているわけではないから」です。
例えば、関節は骨だけで構成されているのではなく、「血管・神経・筋肉・靭帯といった軟部組織」が関与しています。背骨も同様に、骨だけでなく、多くの靭帯や筋肉に支えられて成り立っています。そして、慢性疼痛には、脳の痛みの感じ方も大きく関与するため、必ずしも骨だけが問題とは言えないわけです。
一般的に、痛みに関する治療は、現在出ている症状と機能障害に応じた「対症療法(症状に対する治療)」や「保存療法(手術・侵襲的処置以外の治療全般)」が基本となります。鍼治療もまた、この考え方に基づいて治療方針を決定していきます。
仮に、痛みと画像所見が100%一致するのであれば、「対症療法」や「保存療法」自体が無意味と考えられそうですが、実際はそうではありません。痛み止めの内服や鍼治療によって症状が改善した経験がある方も多いと思います。その際、「骨格の構造に何らかの変化が生じているのか?」と言えば、とくに短期間で痛みが軽減・消失するような場合は、「特別な変化は起きていない」と考えることのほうがより自然です。
そのため、「画像所見があるなら、手術さえすれば痛みはなくなる」と言うのは大きな誤解です。画像所見は重要ですが、症状・機能・治療経過などを含めて段階的・総合的に評価していく必要があると考えています。また、患者さんが望めば、すぐに手術適応となるわけでもありません。
まずは、「QOL(生活の質)」や「ADL(日常生活動作)」の改善を目的とした「保存療法」を継続的に行うことが大切です。そして、専門医の管理のもと、手術が適応となる場合は、手術を検討するということが一般的な流れです。この一般的な流れから外れないことが治療の大原則です。