コラム記事
最終更新日:2025年12月25日
鍼の本数は多い方がいい?少ない方がいい?
よく、「鍼の本数は多い方がよい」であったり、「少ない方がよい」という主張を目にしたり耳にすることがあります。また、患者さんからも聞かれることがあります。本稿では、鍼の本数について話をしていきたいと思います。
私の使用する鍼の本数が多いか少ないかは、厳密に言うと、相対的なものなので、私自身にも本当のところはわかりません。ただ、周りの同業者から「使用する鍼の本数が比較的多い」という評価を頂きます。
実際の私の臨床では、たしかに鍼の本数が多くなる傾向にありますが、患者さんによって本数はバラバラです。それこそ多い方では100本を超えることもありますし、少ない方では両手の指で数えられるくらいのこともあります。ポイントは、「鍼の本数を決めた後に、逆算して施術内容を決めているわけではない」ということです。単純に、結果として本数が多くなったり、少なくなったりするというのが私の考えです。
鍼の処方について教科書どおりの話をすると、「①局所取穴」、「②遠隔取穴」、「③経験取穴」、「④循経取穴(経絡を基準とする)」、「⑤弁証取穴(証という体質を基準とする)」などの原則に基づいて「経穴(ツボ)」を決めていきます。もちろん、施術中も触診をしながら反応点に対しても鍼をしていきます。また、患者さんご自身が刺激に対してどのような反応をするかと言う点も重要です。いくつか事例を交えながら、鍼の本数が増えてしまう理由を述べていきます。
局所治療をする際に、例えば「筋硬結(こり)」を直接グサグサ刺して抜いてを繰り返すことがあります。これを「単刺(たんし)」と呼びます。トリガーポイント療法やドライニードリングという呼び方の方が一般的かもしれません。
「単刺」をした後、一旦抜いてしまった鍼をもう一度使用すると、刺さりが悪くなるため「刺入痛(しにゅうつう:刺さる時の痛み)」が強く出る可能性が高まります。施術者としても、操作性が下がるため、私は一度刺した鍼はすぐ廃棄をしていまいます。映画「七人の侍」で刀を交代しながら戦うシーンと同じ理屈です。
すぐ鍼を廃棄してしまうと必然的にコストが上がってしまうため、「もったいない、、、。」という意見もあるかもしれません。しかし、一旦体内を通過した鍼は、皮脂などによって、どうしても劣化が起きてしまいます。私は、「サービス面・安全面・パフォーマンス面」から再使用は好ましくないと考えています。そのため、本数は必然的に増えてしまうわけです。
また、患者さんの訴える症状が多かったり、広範囲に存在する場合などは、どうしても鍼の本数は増えていきます。これは避けようがありません。単なる施術者都合ではなく、「これだけは、、、。」というボトムラインと言えます。建築物で例えると、梁を間引いたり、基礎工事をおろそかにすることは出来ないのと同じ理屈です。
このように、鍼の本数は結果的に多くなったり、少なくなるわけです。そのため、鍼の本数から逆算して処方を決めていくことには無理があるように思います。理由は、仮に逆算方式を是としてしまうと、「本来の処方から何かしらを間引いてしまう現象」がおきてしまう気がしてなりません。
もちろん流派によって、治療方法や理論は異なるため、場合によっては鍼を一本しか使わないこともあるかもしれません。これ自体は何も問題はありません。つまるところ、「鍼の本数によって優劣はない」ということです。
医療は、どちらかと言えば「属人的」で、「誰が診るか」が重要です。鍼の本数よりも、専門性や相性も含めて「どの施術者が担当するのか?」が非常に大事です。