コラム記事
最終更新日:2026年2月4日
通院回数を守ることの大切さ
なかなか症状が改善しない場合、「通院コンプライアンス(通院回数の順守)」が適切かどうか?を見直すと良いかもしれません。通院回数の目安は、症状や疾患によって異なります。そして、個人差も考慮すると、さらに適切な通院回数が細かく分かれていきます。
通院回数の話となると、「なぜそんなに?」と疑問に思われる方もいるかもしれませんが、そこには専門的な考え方や、これまでの臨床の積み重ねに基づくため、「そういうもの」と言わざるを得ない部分もあります。通院回数、加療期間や施術内容などは、ある程度の見立てがあり、それをもとに専門家が個々の症状や回復の状況を見ながら、「アセスメント(評価)」を通じて調整していくものです。
例えば、若年層の軽度の肩こり・腰痛などの筋疲労であれば、「おっ!最近疲れが溜まったな、鍼でも受けるか。」で済むわけです。脳卒中(脳梗塞・脳出血)の回復期であれば「出来る限り多く」が適切ですし、顔面神経麻痺の中等症・重症例の亜急性期~回復期は「週2回以上」が適切な通院回数となります。また、予後は年齢や基礎疾患の有無によっても左右されるため、該当する場合は、より慎重にケアをする必要があります。何となく通いながら、早く治したいというのは成り立たないと言えます。
もし、患者さん自身の感覚で通院回数を決めてしまうと、感覚的には丁度よい感じは生まれても、結果として加療期間が長引いたり、思ったよりも効果が見えづらかったり、悪化してしまったりするため、メリットよりもデメリットが多い印象です。せっかく通った時間・費用が無駄になる可能性もあるということです。また、年齢や状況によっては、完治することは難しいこともあり、将来悪化させないことを念頭にいれた「ケア(症状のコントロール)」も大切です。
なかには、「治らないなら何しても意味がない。ケアなんて考えはおかしい。」と考える方もいるかもしれません。じつは、治るか治らないかの二元論で治療を否定してしまうと、様々な治療行為が意味を為さなくなります。極端な話、腎透析は不要なのか?今飲んでいる降圧剤や糖尿病治療薬等は不要なのか?ということにも繋がりかねません。すべての治療・処置の目的が、必ずしも「完治が目的とはかぎらない」のです。将来に向けたケアも大切ということです。
「EBM:Evidence-Based Medicine」に馴染みがない方も多いと思いますが、「科学的根拠に基づく治療」を指します。EBMの三本柱は、「①科学的根拠(エビデンス):RCT(ランダム化比較試験)などで得られた最新の医学的知見」、②患者の価値観:治療に対する希望や生活背景、価値観の尊重」、「③医療者の臨床経験・専門技術:医師や鍼灸師などの臨床家が持つ知識・経験・技術」となります。とくに、③医療者の臨床経験・専門技術のところが忘れられがちですが、とても重要な構成要素です。理由は、仮に③が不要となると、「どこで何をしても同じ」という考えに陥ってしまう可能性が高まるからです。そうなってしまうと、②患者の価値観だけに偏りが生じてしまい、結果として適切な治療・処置が選択されない原因になりやすいと言えます。
このように、適切な通院回数というのは、上記の「①科学的根拠(エビデンス)」と「③医療者の臨床経験・専門技術」に依存する度合いが大きいことがわかるはずです。そして①より③が特に重要です。理由は、「①科学的根拠(エビデンス)」は大枠に過ぎません。科学的根拠は参考にすべきものであっても、それが患者さんの状況に合うかどうか、どのように運用すべきかは「③医療者の臨床経験・専門技術」の前提があって初めて「治療・処置」が成立するからです。例えるならば、マニュアルと専門家の関係です。素人考えでマニュアルだけをみてどうにかなるだろうと言うのは大きな間違いです。
なかなか症状が改善しない場合、まずは「通院コンプライアンス(通院回数の順守)」が適切か検討することが大切です。そして、現在の症状・疾患が、本当に完治が目標になるのか?またはコントロールするためのケアを目標にすべきかをしっかり考えることです。もし、ご自身の加療目的が不明瞭であれば、担当者に相談することが大切です。素人考えではなく、「EBM(科学的根拠に基づく治療)」を重視した運用をおすすめしています。