コラム記事
最終更新日:2026年2月15日
パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いと治療の考え方
「パーキンソン病(PD)」と「パーキンソン症候群(パーキンソニズム)」は、名前が似ていますが「異なる疾患」です。
パーキンソニズムは、「パーキンソン病に似た症状が出る疾患・症状の総称(症候群)」です。例えば、中枢神経系が広く障害される「多系統萎縮症(MSA)」、幻視を特徴とする「レビー小体型認知症(DLB)」、眼球運動障害を特徴とする「進行性核上性麻痺(PSP)」が有名な疾患です。また、脳血管障害(脳梗塞、脳出血)を原因とする「脳血管性パーキンソニズム」、薬剤の副作用を原因とする「薬剤性パーキンソニズム」も存在します。
パーキンソン病とパーキンソニズムは、「明らかな他疾患による二次性であるかどうか」が大きな違いです。そのため、パーキンソン病は、他の病気を除外しつつ、支持的所見を積み上げて診断されるということです。近年では、ドパミン神経や心臓交感神経の機能評価に「DATスキャン(ドパミントランスポーター(DAT)の働きを画像で評価する検査)」や「MIBG心筋シンチグラフィー(心臓の交感神経機能を評価する検査)」などの核医学検査が用いられるようになり、より診断の精度が向上しています。
パーキンソン病は、レボドパ製剤が効きやすく、薬剤療法開始とともに症状が改善しやすいと言われています。しかし、多系統萎縮症やレビー小体型認知症、進行性核上麻痺では、レボドパ製剤は効きづらく、薬剤過敏性が高いレビー小体型認知症の場合は、諸症状が強く出ることがあります。また、脳血管性パーキンソニズムでは試験投与されることもありますが、薬剤性パーキンソニズムでは原因となる薬の減薬が必要となります。また、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺は、進行が比較的速い傾向が知られており、発症から比較的早期に日常生活動作が制限されやすく、パーキンソン病とは異なる経過を辿る傾向があります。
治療戦略は、原則として早期から原疾患に応じた治療を行うこと(例:脳血管性、薬剤性など)が基本となります。進行性の経過を辿る場合(PD、MSA、DLB、PSPなど)には、対症療法を中心に諸症状を改善しながら運動療法などを併用し、身体機能を維持することが重要です。
進行性疾患では、初期は比較的症状が安定していることも多く、「後から対応すればよい。」と考えがちです。しかし、「振戦や筋緊張亢進によるエネルギー消費の増加」や「自律神経機能障害に伴う消化管機能低下」によって体重減少や筋力低下が進行することがあります。その結果、「サルコペニア(加齢や疾患に伴う筋肉量・筋力の低下)」を合併し、要介護度の上昇や寝たきりのリスクが高まります。そのため、早期から質の高い包括的なケアが重要となります。
進行性のパーキンソン病やパーキンソニズムは、薬物療法や運動療法(いわゆる標準治療、従来治療)が主体ですが、鍼刺激は、①神経機能の賦活作用、②自律神経機能の調整作用などが期待されるため、「従来治療であまり効果が見られない場合」や「副作用が強く出やすい場合」などは鍼治療を併用することで、症状が安定しやすくなる可能性があります。昨今では、自律神経機能障害に伴う消化管機能低下と薬効の関係性が指摘されており、吸収遅延が薬効変動に影響することが知られています。そのため、鍼治療を併用することは、諸症状に対する第三のアプローチとしてではなく、自律神経機能や消化管運動の安定を図ることで、「治療全体を支える可能性がある」と考えられます。
さいごに、進行性疾患は、「予後を含めた連続性のある治療戦略」が必要不可欠です。「初期だから安心だ。」「進行期だから打つ手がない。」という考え方ではなく、可能な範囲で継続的に機能維持を図る視点が重要です。