広瀬台はり院|コラム|梨状筋症候群は「痛み」だけを追ってはいけない

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コラム記事

最終更新日:2026年4月5日

梨状筋症候群は「痛み」だけを追ってはいけない

梨状筋症候群とは、おしりの深部筋である「梨状筋」が、下肢に向かって伸びている「坐骨神経」の圧迫によって生じる一連の神経症状を指します。 この梨状筋症候群による坐骨神経痛は、神経が圧迫されることで、血流障害がおき、栄養されなくなった神経は傷ついてしまっている状況です。 梨状筋症候群の原因である「梨状筋による神経圧迫の解除」が出来れば、坐骨神経痛は徐々に改善します。 しかし、単純な病態メカニズムに反して、梨状筋による圧迫の解除ではなく、神経の痛みに対するアプローチを選択しがちです。

神経障害で重要なポイントは、「圧迫解除までの期間」と「障害の軽重」です 理由は、神経細胞は圧迫が開始されてすぐに神経細胞が完全にだめになるわけではなく、時間経過とともに本来の機能を失っていきます。これが、いわゆる「神経変性」というもので、別の組織に置き換わってしまうのです。 そして、神経変性に至る過程は、「障害されている程度(軽重)」によって左右されやすいと考えます。 例えるなら、真綿でゆるく締められるのか、結束バンドできつく締められるかのようなものです。イメージしてみると、後者のほうが深刻な影響をうけることが想像しやすいと思います。 また、同じ結束バンドできつく締められたとしても、数秒であるか、数日では結果が著しく異なることは容易に想像がつくことです。

神経変性というと、ピンとこない方も多いと思います。 しかし、「神経の圧迫を解除しても、神経症状は良くならなかった。」という話を聞いたことがある方は多いと思います。 この原因を取り除いても、良くならないということは、「神経自体がすでに回復が出来ない状況に変わっていること(神経変性)」を指します。 そのため、神経変性を起こさないことが第一のステップなのです。

梨状筋症候群は、臨床的には、「梨状筋が硬くなることで生じる筋筋膜症候群(筋筋膜バンドが硬くなり生じる一連の症候群)」と言い換えてよい病態です。 したがって、筋筋膜症候群に準じた治療方針を検討していきます。 硬くなった梨状筋の筋筋膜上の「硬結(コリ)」にアプローチし、筋血流量をあげて、筋緊張を緩和することで回復していくイメージです。 しかし、梨状筋は深部に位置しており、簡単に直接アプローチする方法は限られます。

梨状筋は、おしりの膨らみの更に下にあり、仙骨から大腿骨にのびている筋肉です。 体格によって深さは変わりますが、鍼の長さでいうと75mm~90mmを使用するほど深部にあります。 そのため、解剖学的にも体表から温めたり、揉んだり、圧したりするなどの間接的アプローチが必ずしも有効とは限らないのです。 とくに、間接的アプローチで改善しない場合は、鍼治療のように直接的アプローチが推奨されます。

鍼治療では、梨状筋に鍼先を到達されることで、直接的に筋筋膜を刺激します。 これによって、問題となっている箇所に鍼先が到達すると、「局所単収縮反応(LTR)」という「筋肉がピクピク動く反応」が生じます。 また、神経が傷付いている場合は、神経に沿った触電感が生じます。 この触電感は、鍼先が神経を傷付けているというよりは、傷付いて過敏になっている神経に刺激が入りやすいことが理由の一つです。

一般的に、筋肉がピクピクする「LTR」が軽減するまで、刺激を加えることで、筋肉がゆるみやすいと考えられています。 そのため、梨状筋全体に鍼を刺し、LTRが確認できた刺鍼箇所には、適宜刺激を加えていきます。 神経障害の期間と程度が軽い場合は、直後から痛みが軽減していくことが多いですが、前述のように時間と障害程度が大きい場合は、傷付いた神経の回復にもある程度の期間が必要となります。 これには個人差もあるため、経過を観察しながら一定期間の加療を加える必要があります。

さいごに、梨状筋症候群は比較的理解しやすい病態ですが、神経変性が生じると難治化しやすいことがわかります。 そのため、早期からの適切なアプローチが重要となるのです。

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