五十肩(肩関節周囲炎)
■1)五十肩とは
五十肩(肩関節周囲炎)は、肩関節の関節包や滑液包、腱板などの軟部組織に炎症が生じ、痛みと可動域制限を引き起こす疾患です。40~60代に多く、特に明らかな外傷のないまま発症し、進行性に運動障害を伴うのが特徴です。体表を観察すると、局所の筋肉が痙攣したり、ピクピクするなどの「局所単収縮反応(Local Twitch Response:LTR)」が多く認められます。
■2)原因と背景
加齢や血流障害、肩関節の不動などが関与し、発症します。一般に以下の3期に分類されます:
- 急性期(炎症期):安静時痛が強く、夜間痛もみられる
- 拘縮期:痛みは軽減するが、著しい可動域制限が残る
- 回復期:関節可動域が徐々に回復する
■3)当院の施術内容
当院では以下のアプローチを組み合わせて対応しています:
- 局所の圧痛点・トリガーポイントへの刺鍼(ドライニードリング)
- 三角筋・回旋筋腱板への刺鍼
- 僧帽筋・肩甲挙筋筋・後頭下筋群への刺鍼
- LTRを誘発させる手技
- 徒手による肩関節周囲の可動域訓練
- セルフケア指導
用語解説:ドライニードリング
<ドライニードリングのイメージ>
解説:一般的な鍼灸鍼を用い、筋・筋膜上のトリガーポイントを刺激することで、「局所単収縮反応(Local Twitch Response:LTR)」と呼ばれる独特の反応を誘発させる手技です。LTRが生じることで筋緊張が緩和され、血流の改善とともに痛みが軽減・消失しやすいと言われています。薬液を使用しないことから、欧米では「ドライニードリング(Dry Needling)」と呼ばれている技術体系です。
■4)施術方針
初期は週1〜2回を基本とし、改善がみられた段階で間隔を調整します。トリガーポイントの変化や筋緊張の改善を観察しながら、漸減的に施術を継続していきます。一般的に、トリガーポイントに鍼先がヒットすると、①(多くは複数回)LTRが生じたり、②鍼独特のひびき感(得気、鍼感)が生じます。この「LTR」、「ひびき感」は治療指標となり、症状軽減と共に軽減していきます。
関節可動域制限がない場合は、「筋筋膜性疼痛」のような経過をたどります。関節可動域制限がある場合は、回復までにある程度の期間を要します(場合によっては難治化)。数カ月~数年と大きく差があります。
■5)院長からアドバイス
五十肩(肩関節周囲炎)は、急性期の炎症度合いによって、拘縮の程度が決定されると言われています。そのため、急性期は疼痛・炎症管理を積極的に行い、後遺症予防(凍結肩:高度な肩関節可動域制限)に努めます。拘縮期以降は、疼痛管理に加え、可動域改善を目的にした施術方針に切り替えます。
一般的に、急性期では安静にすることが推奨されますが、痛みの軽減・消失が認められた後は、積極的な可動域訓練が推奨されます。この段階的な治療戦略が必要ですが、「痛みがゼロになるまで安静にしていよう、、、」と極端に庇い、安静状態を継続する方がいます。実は、関節運動を中長期的に行わない場合、拘縮がすすみ、運動時痛がより極端に出現するようになります。これは急性期の炎症ではなく、拘縮が慢性化した状態(凍結肩)と考えます。
凍結肩を解除するためには、①鍼治療などで局所循環不良を改善し、②徒手による可動域訓練、③ご自宅でのセルフケアが重要となります。(セルフケアを含め)適切な可動域訓練をしない場合は、可動域は回復しづらい傾向にあり、難治化すると可動域が元に戻りづらくなります。
昨今では、サイレントマニピュレーション(非観血的関節授動術:神経ブロック麻酔下で癒着した関節包を徒手で引き剥がす方法)が出現してきましたが、万能と言うわけではなく、高齢女性(とくに骨粗鬆症がある)は上腕骨骨折や肩関節の脱臼が起こる可能性があり、不適となることがあります。そのため、早期から増悪させないことが大切です。
「五十肩はそのうち治る」という話を聞くことがありますが、放置していれば治るというものではなく、高齢者の場合は、より難治化しやすい傾向にあります。単なる「肩が挙がらないだけ」とは考えずに、適切なケアをすることが大切です。
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