坐骨神経痛
■1)坐骨神経痛とは
坐骨神経痛は、腰部から臀部、下肢後面にかけて走行する坐骨神経に沿って出現する痛みやしびれの総称です。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの疾患による神経圧迫が主な原因で、痛みは片側に限定されることが多く、長時間の座位や歩行で悪化することがあります。
■2)原因と背景
最も一般的な原因は椎間板の突出による神経根の圧迫で、これにより炎症や神経伝達の障害が生じます。また、梨状筋症候群や筋筋膜性疼痛、骨盤内疾患、帯状疱疹などが原因となることもあります。神経の絞扼や血流障害が慢性化すると、痛みが長期化する傾向があります。
■3)当院の施術内容
当院では以下のアプローチを組み合わせて対応しています:
- 神経近傍刺鍼(例:委中・承扶・環跳・殷門)
- トリガーポイントへのドライニードリング(梨状筋、中殿筋など)
- 関連部位への刺鍼(主に腰部)
用語解説:神経近傍刺鍼
<神経近傍刺鍼のイメージ>
解説:「神経近傍刺鍼(しんけいきんぼうししん)」は、神経近くに鍼を刺入し、疼痛の緩和や神経機能の回復を図る技法です。例えば、下肢痛を誘発する「坐骨神経(ざこつしんけい)」は、臀部の深部に位置しますが、鍼を用いることでその神経に直接的なアプローチを加えることができます。解剖学的知識に基づき、安全に施術を行うことで、高い治療効果が期待できます。
用語解説:ドライニードリング
<ドライニードリングのイメージ>
解説:一般的な鍼灸鍼を用い、筋・筋膜上のトリガーポイントを刺激することで、「局所単収縮反応(Local Twitch Response:LTR)」と呼ばれる独特の反応を誘発させる手技です。LTRが生じることで筋緊張が緩和され、血流の改善とともに痛みが軽減・消失しやすいと言われています。薬液を使用しないことから、欧米では「ドライニードリング(Dry Needling)」と呼ばれている技術体系です。
■4)施術方針
初期は週1〜2回を基本とし、改善がみられた段階で間隔を調整します。症状の改善を観察しながら、漸減的に施術を継続していきます。一般的に、神経障害部位(神経過敏)に鍼先がヒットすると、①(多くは複数回)LTRが生じたり、②鍼独特のひびき感(得気、鍼感)が生じます。この「LTR」、「ひびき感(神経痛の場合は触電感)」は治療指標となり、症状軽減と共に軽減していきます。ただし、原因疾患によって、経過は大きく異なります。
■5)院長からアドバイス
一般的に、坐骨神経やそれに関連する筋肉(梨状筋など)を直接刺激することで、局所の血流が改善し、神経症状が緩和しやすくなります。ただし、坐骨神経や梨状筋は、「体表から約5〜8cmの深部(臀部)」に位置しており、マッサージやストレッチでは十分な刺激が届きにくいとされています。そのため、鍼治療などの深部アプローチが適していると考えられています。
坐骨神経痛は、症状名のため、原因となる疾患に基づいたアプローチをしていきます。高齢者の場合は、梨状筋症候群(臀部の筋過緊張による坐骨神経圧迫)に腰椎変形(坐骨神経痛も生じる)などが混在しているなど、複雑な背景があることが多いため、広範囲に施術を行います。神経圧迫などが長期に渡る場合は、神経自体の損傷も大きいため、回復までにある程度の期間を要します(場合によっては難治化)。
坐骨神経痛だけに着目するのではなく、発症原因を考え、悪化・再燃させないようにすることも大切です。骨粗鬆症のように「骨がもろくなる」基礎疾患を抱えている場合は、脊椎の変形(背骨が複数個所折れている状態)を悪化させないよう、薬物療法に加え、適切な生活習慣とラジオ体操などの運動(筋骨の強化)が大切となります。骨粗鬆症は、ホルモンの影響因子が高く、閉経後の女性、とくに筋力や骨密度が低下しやすい高齢者にリスクが高いとされています。
また、脊柱管狭窄症などで尿失禁・便失禁(排泄のコントロールが困難)などの膀胱直腸障害を併発している場合は、症状が進行すると不可逆的な経過(一般的に治らない)をたどるため、手術適応となる可能性が高く注意が必要です。
「坐骨神経痛はそのうち治る」という話を聞くことがありますが、放置していれば治るというものではなく、体質・疾患によって罹患期間は大きく異なり、放置すれば長期化・難治化する可能性があります。単なる「下肢の痛み」とは考えずに、早期から適切なケアを行い、再発や悪化を防ぐことが大切です。
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