広瀬台はり院|施術例|末梢性顔面神経麻痺

広瀬台はり院

末梢性顔面神経麻痺

末梢性顔面神経麻痺のイラスト

■1)末梢性顔面神経麻痺とは

末梢性顔面神経麻痺とは、顔面神経(第VII脳神経)の炎症や障害によって顔面筋が動かなくなる状態で、ベル麻痺やラムゼイ・ハント症候群がその代表例です。突然の顔面片側の表情筋麻痺が特徴で、口角やまぶたが閉じられなくなるなど、日常生活に大きな影響を与えます。

■2)原因と背景

多くは特発性で、ウイルス感染(単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスなど)や寒冷曝露が引き金になるとされています。ベル麻痺が最も多く、次いでラムゼイ・ハント症候群が多いと言われています。ベル麻痺は比較的回復しやすい一方、ラムゼイ・ハント症候群では回復に時間を要する例や後遺症を残す例が多い傾向にあります。

■3)当院の治療内容

当院では以下のアプローチを組み合わせて対応しています:

  • 顔面部への刺鍼
  • 神経、筋肉、経絡に沿った刺鍼(浅刺多鍼または透鍼)
  • 徒手による表情筋ストレッチ
  • 表情筋トレーニング(MBF法、CI療法)
  • セルフケア指導など
用語解説:表情筋トレーニング
ミラーバイオフィードバックのイメージ

<MBF法のイメージ>

解説:「鍼治療による局所循環改善」や「フェイシャルストレッチ」に加え、「MBF法(ミラーバイオフィードバック:Mirror Biofeedback)」や「CI療法(Constraint-Induced Movement Therapy)」などの表情筋トレーニングを併用することで、非麻痺側の過活動を抑制しつつ、麻痺側の運動再教育を図ります。これにより、「病的共同運動(synkinesis)の発症抑制」や「生活の質(QOL:Quality of Life)の早期回復」を目指していきます。

■4)施術方針

急性期は病院でのステロイド療法を優先し、亜急性期以降から鍼治療を行います。発症後7~14日に実施した誘発筋電図検査(ENoG:顔面神経を刺激し左右差を計測する検査)の結果を指標に、予後予測に基づいた施術を計画していきます。回復期では週1~2回を目安に、①表情筋の可動性、②神経再生の促進、③後遺症予防・軽減を目指します。

■5)院長からアドバイス

末梢性顔面神経麻痺は、単なる「顔の麻痺」と捉えられがちですが、①病的共同運動(例:目を閉じると口角があがる、口を動かすと目が閉じるなど)、②表情筋の痙縮・拘縮(ひきつりなど)などの後遺症が出やすく、急性期から後遺症期に至るまで、所見や発症経過に基づいた、段階的・多面的・専門性の高いアプローチが求められます。

鍼治療とともに、後遺症予防・軽減のための表情筋トレーニング(MBF法、CI療法)の重要性が高く、中等症以上の全例(ENoG値40%未満)に推奨されますが、患者さん単独での遂行は困難を極めます。また、間違った方法は、後遺症を誘発・増悪させるだけではなく、脳が運動の仕方を忘れてしまう「学習性不使用(脳が使わない機能を低下させる)」を生じさせ、二次性の運動麻痺に陥るリスクがあがります。

後遺症となる病的共同運動は、回復過程で生じてきますが、ある程度回復した後に「ドロップアウト(治ったと考えて自己中断)」してしまうと、後遺症が高度に完成してしまうことがあります。後遺症の前兆は、ある程度回復が認められる4カ月頃から生じるため、発症1年程度は経過観察が必要です。(現行では、発症1年後のスコアで治癒か判断に改定)

よく「ベル麻痺はほとんど治る、ラムゼイハント症候群は治りづらい。」と言われがちですが、これは単なる統計上の話に過ぎません。「ベル麻痺なら中等症以上であっても安心だ。」ということはなく、後遺症を想定した専門的なケアが必要となります。末梢性顔面神経麻痺を「単なる顔の麻痺とは考えないこと」が「回復の近道」です。

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